総研ノート:世界の各地から

オランダの教職員組合―AOb委員長Walter Dresscher氏ヒアリング

 オランダには3主要教職員組合がある。AOb(組合員約8万人、FNVと呼ばれる「独立系」連合に属す)、CNV Onderwijs(組合員約5万人、CNVと呼ばれるキリスト教系連合に属す)、およびにCMHF(中級・上級職員センター)の教育部で約2万人である。CMHFは政府、教育、ケアおよびに企業に従事する組合員で構成されている。AObはどちらかというと初等教育の教員が多く、したがって女性メンバーが主流であるのに対して、CMHFは体育教員が多く、男性が多いというような特徴はある。教育関係労働者の組織率は約35%である。

 オランダは第二次大戦後まで、「柱化」された社会構造となっていた。教会、学校、政党、ラジオやテレビ局、組合などがそれぞれカソリック派、プロテスタント派、独立派に別れていた。現在の組合運動でも、キリスト教系と独立系にいうようにその名残が見えるが、以前のようにはっきりと分別されているわけではない。またカソリック派は、必ずしもプロテスタント側についたわけではなく、独立派についたこともある。
 教育分野の団体協定(オランダ語ではCAO)締結の際には、この3組合が労働者全体の代表として、一体となって交渉に臨む。教員のみならず、用務員などもこれらの組合のメンバーとなれるが、用務員はABVAKABO(ケア、福祉、公共セクターの組合)などに属する場合もある。
 団体交渉では、給与、勤務時間、病欠の際の規定、授業方法などについて交渉する。
 
 オランダの教員のフル勤務は、年間1659時間である。中等教育の場合、そのうち750時間が実際に授業をする時間、つまり教壇に立つ時間で、残りの時間は会議、授業の準備、授業後の作業、教育・訓練に費やすことになっている。教壇に立つ750時間は、「750授業時間」であり、50分が1授業時間とみなされている。ただしオランダでは、教員のパート勤務率は高い。(オランダの「パート」は正規契約であり、フルとの違いは勤務時間に比例する給与のみ。)
 教員の給料は、オランダ社会では平均的とされているが、昇進による給与アップの機会が少ないということが、指摘されてきた。教員不足という環境のもと、若い人たちが教職に魅力を感じるように、去年から10年計画で、大幅な教員の給与アップが教育大臣によって約束されている。ただし現在の経済危機で、果たしてこの約束が守られるかどうかが注目されている。
 
 オランダ教育界の一番の懸念事項は、中退者である。移民・難民を受け入れてきたオランダでは、特にマイノリティーの若者が、卒業証書を得ることなく学校をやめていく率が高い。マイノリティーでなくても、「崩壊家庭」の子どもの学校中退率も高い。学校中退者の問題は、ただ教育というより、社会的な問題とされている。
 
 現在オランダの教職員組合が一番力を入れていることは、授業に関して、教員のさらに完全なオートノミーを確保するということである。原則としてオランダの教員は、自分自身で教科書を選び、授業方法を確立することができる。教員自身が教科書を作成して、それを使ってもよい。ところが実際には、学校グループという新しい概念のもと、学校グループ単位で教科書や授業方法を統一しようという動きがあり、教員の自主性が脅かされてきていると組合では見ている。以前のような専門職としてのオートノミーを再確立することが、組合員によって期待されている。

シャボットあかね(通訳、オランダ在住)

2009年4月20日