総研ノート:コラム

日食は「雨天決行」です

 学生同士が、日食の話題で盛り上がっていた。当然、空模様の話になり、ある学生が・・・
「えっ? 曇とかでも日食って行われるわけ~?」

 確かに「天体ショー」とマスコミは言っているけれど、けっして興行ではない。お客様へのサービスとして、「いつもより長く隠れてます~」というわけにはいかない。人為的な見世物ではなく、自然現象であり、一回限りの出来事で再生はできない。このことが実感となっていないのだろう。

 そう言われれば、あるいは言われなくとも、こちらから操作できるようなものではないことは学生もわかっているのだけれど、つい「雨天順延」がありうるのではないかと錯覚してしまうほど、現代という時代は「つくられた」世界、見る側の満足度を第一にした商業主義的リピート機能を満載した世界なのだろう。ここでは「一回性」という現実がむしろ虚構に見えてしまう。

 単純再生だけではなく、スーパースローの映像や角度を変えた映像など工夫はいろいろで、実に多角的に現象をとらえることができる。しかし、現実は、一定の角度からしか見ることはできない。つまり、自分の「立場(立ち位置)」が大切となる。「どこに立つか」で見え方は大きく変化する。これはもはや太陽だけの話ではない。生活のあり方を自分がどうとらえ、人や社会に対してどのようにかかわっていくのかという問題である。さまざまな技術、多様な見方を知らせてくれるせっかくの技術が、このような「真剣さ」を奪うことになってしまってはならない。

 先の学生に応えてある学生が・・・「日食は雨天決行でしょ~?」

研究会議議員 池田賢市

2009年7月22日

それって「長所」なの?

 推薦入試の面接をはじめさまざまな場面で、学生から提出された自己アピールに関する書類をみる機会が多い。それには自分の長所・短所を書く欄が必ず設けられている。そしてかなり多くの者が「決めたことは最後までやり通す」といった内容のことを書く。意志の強さや忍耐強さなどをアピールしたいのだろうという気持ちはわかるのだけれど、それってほんとに「長所」なのかなぁ、と思う。現実の生活の中では、むしろ逆ではないか、と。

続きを読む »

2008年12月16日

映画「三池終わらない炭鉱(やま)の物語」を

 三〇〇ほどの席が開演まえから埋まり、若者が多いことが目についた。映画情報誌(「ぴあ」)によれば、ハリソンフォード主演の娯楽大作をしのぐ人気を博したという。苛酷な労働の炭鉱(やま)の物語がなぜ多くの人々の関心をとらえるのか。とくに現代の青年を魅了するのか。

続きを読む »

2008年8月18日

国連・障害者権利条約がついに発効

2008年5月3日、エクアドルが批准し批准国が20ヶ国を超えたため国連の障害者権利条約(The Convention on Rights of the Persons with Disabilities)が国際条約として発効した。日本政府は2007年9月に高村外務大臣が署名をしているが批准はまだ行っていない。国連で5年をかけて審議されてきたこの条約が採択されたのは、奇しくも教育基本法改悪された2006年12月の13日であった。
 その第24条で教育はインクルーシヴ教育が原則であることが規定されている。

続きを読む »

2008年5月12日

北欧の光:フィンランドの教育 ~イングランドもスコットランドも注目

 去る2月末から3月初めにかけて、私たちは一行5人でイングランドとスコットランドの訪問調査を行った。日教組からの委託研究で行っている教員労働国際比較研究の細部をつめることが目的であった。その報告書は6月末には完成予定である。
 さて、両国では学校以外に、教育インターナショナル(EI)に加盟しているイングランドのNUTと、スコットランドのスコットランド教育研究所(EIS)、スコットランド中等教員組合を訪問し、インタビューした。この訪問調査にかかわって、興味深いことがあった。

続きを読む »

2008年4月28日