総研ノート:世界の各地から

PISA2009の結果をイタリアの新聞はどう報じたか??

 12月7日はミラノの守護聖人、サンタアンブロージョの日であり、ミラノ市だけの地方祭である。従って、この日、ミラノ市内の学校、郵便局、銀行は休みに入り、市内のすべての機関がストップする。尚、この日はオペラの殿堂のスカラ座のシーズンオープニングの日である。この日は世界中のVIP達が華麗なドレス、タキシードを身にまとい、スカラ座に集合する。今年はワーグナーの作品で華々しく開幕した。が、スカラ座正面に位置し、イタリアが誇る芸術家兼科学者、レオナルドダヴィンチの石像を中央に構えたスカラ座広場では、大々的なデモが行われていた。その目的は「文化事業、教育機関に対する政府の予算削減」に対する抗議である。確かにこのところの政府の経費削減はひどい。「病欠した先生のかわりをしてくれる先生が足りないから今日も2時間ブランクがあった」「こわれたドアも修理してもらえるお金がない」などと、中学生の私の長女にも目につくほどの、「お金のなさ」である。先日は長男の小学校で、「40ユーロの任意の寄付」の案内があった。

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2011年1月11日

イングランド公教育改革の舞台裏―義務教育年齢引き上げと社会変容―

義務教育年齢の法改正
 
 2007年6月、ブラウン政権が発足し、教育技術省は子ども・学校・家庭省と再編成され、ブラウン政権による新しい教育改革の舞台の幕があけられたのである。まず、その改革のひとつとして、2007年11月、政府は、イングランドの義務教育修了年齢を現行の16歳から18歳へと引き上げる方針を発表した。そして、翌2008年、Education and Skills Act 2008により法改正がなされ、義務教育修了年齢を2013年まで17歳、2015年まで18歳と段階的に延長されることが正式に決定された。義務教育修了の年齢改正は、1972年に、義務教育年齢が15歳から16歳に引き上げられて以来36年ぶりの法改正となる。従来、イングランドの義務教育は、原則として、子どもが5歳の誕生日を迎えた次の学期からはじまり、5歳から6年間を初等教育、16歳になる7月までの5年間の中等教育と定められており、義務教育最終学年に、GCSE(General Certificate of secondary Education)とよばれる試験を受け「義務教育修了」が認められる。
 
 この新たな法改正によって、イングランドの16歳以上の若者は、就学を希望するものは中等学校等で引き続き学習を続け、就労を希望する若者、あるいは就労中の若者には、義務教育期間として週20時間の労働とともに職業訓練や就労に際して必要な技能実習が与えられるなど、本人希望にあわせ、また各々の能力・適正に応じて進路の選択が可能になる。

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2009年5月29日

ガブリエッラさんとジョルジョさん来所

2009年4月3日(金)午後、イタリアの最大労組でありCGIL(チィジィエッレ、イタリア労働総同盟)参加の教育関係組合であるFLC(知的労働者連合)の国際部担当のガブリエッラ(Gabriella Giorgetto)さんとジョルジョ(Giorgio)さんが本研究所を訪問してくれた。2007年5月、パリのOECD本部建物で行われたTUAC会議で面識を得たのがきっかけである。その後、ガブリエッラさんには多くの情報を提供してもらっている。
 目的は日本の教育政策動向や組合活動についてFLCの機関誌に記事を書くためのヒアリングだった。中村讓日教組委員長が最初に話をし、後半は教育総研関係者と意見交換した。

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2009年5月 7日

オランダ教職員の生活実感:インターンコーチMarion Lansさんインタビュー

 マリオン・ランスさんは、22年間教壇に立った経験を持つ、47歳の基礎学校の「インターンコーチ」(IB: interne begeleidster 男性の場合はinterne begeleider)である。基礎学校とは、日本でいう幼稚園2年間と小学校6年間を組み合わせたオランダ初等教育の学校である。この基礎学校はオランダでは中都市とされるアルメスフォルト市の新興住宅地にあり、若い家族が集中していることから急成長を続けている。この学校の一番の問題は、急激な生徒数の増加に対応しながら、質を確保しなくてはならないということである。
 

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2009年4月27日