総研ノート:書評・図書紹介
【図書紹介】私の鏡? 内田良子『登園しぶり 登校しぶり』(ジャパンマシニスト社、2009年5月)
この本を読んでみようと思ったきっかけは、長女が同じ学年の子どもたちよりも学校を休みがちで、心配することが多かったからです。長女は本当に体調が悪いのですが、そんなときに優しく休ませるべきか、心を鬼にして学校へ出すべきか、私はずっと悩んできました。そして家の居心地の良さに「このまま不登校になったら...」と考えていました。その答えを知りたく読んだのですが、読み出したら涙が止まりませんでした。
中でも、下の子どもが産まれた時の上の子の話では、自分が長男を産んだ時の、嬉しいけれど大変な日々を思い出し 、「ああ、あの頃に戻って長女を抱っこしてあげたい。」と思い涙していました。(中略)
何気なく、この本をリビングのソファに置いておいたら、表紙の絵に引かれたのか、いつの間にか二年生の息子が目に涙を浮かべて読んでいました。理由を聞くと、「子どもなのに嫌と言えないのが可哀相。我慢しなくてもいいのに。」と言うのです。「そんなに悲しいなら、読むのをやめたら。」と言うと、「でも、読みたいの。」と読めない漢字を姉に聞きながら読んでいました。今、この本は、四年前に同居を始めた義母が読んでいます。自分の娘達にも貸してほしいと言ってました。
この本に出会って、自分の頭の中がスッキリしました。これからは、本当の意味で子どもをゆっくり休め、体力・気力が充分な状態で笑って送り出そうと思います。
大切なことを教え頂きありがとうございました。
私の友人に本書を紹介したところ、一気に読んでその感想を教えてくださいました。私をはじめ、この本を読んだ私の身の回りの人たちは異口同音に「自分のことが書いてある」といっています。
文部科学省発表の08年度「不登校」を理由とする欠席者数は12万人とのことです。昨年よりは「減少」傾向で「喜ばしい」ことのようです。しかし、この種の発表がなされるたびに、私は重苦しい気持ちになります。わたしにとってこの数字は、子どもたちが抱えている「問題」の数としか思えないのです。そしてこの数には入っていない子どもたちについてもとても気がかりになってくるのです。
「子どもにはそれぞれ事情がある」
この言葉を初めて聴いたのは本書著者の内田良子先生の講演でした。もう10年近くになります。子どもの目線からのメッセージを柔らかな声と表情で淡々と語られる内田先生は、講演を通してご自分の「思い」を伝えるのではなく、あくまでも子どもたちの「声」を届けてくださるメッセンジャーの役割を担っておられたように感じました。
「子どもの事情」...。大人として教師として子どもの世界を外側から見つめていた私には不思議かつ新鮮な言葉でした。恥ずかしながら、「子どもは主体者である」という概念がそれまでの私にはなかったように思います。内田先生の言葉を反芻しながら、子どもたちの姿を見つめてみるとなんだか子どもの姿がこれまでとは別の輪郭を持ってくるような気がしました。確かに子どもたちはそれぞれにメッセージをもっていました。
本書『登園しぶり登校しぶり』からは、実に多くの子どもたちの声が聞こえてきます。そして子どもたちのメッセージを聞き取れない大人たちの惑い、悩みは、来し方の私の姿に重なりました。
それにしても、子どもを育てることはなんと難しいことなのでしょう。登園をしぶる子どもの姿、学校に居場所を見出せない子どもたち。この子たちが安心して毎日を過ごすためにはいったい何が必要なのでしょうか。私をはじめとした、ワーキングマザーがわが子の「問題」に直面したとき、私たちはいったいどうしたらいいのでしょう。やはり母親は子どもが安心して過ごせるようになるまで手元で育てることが一番なのか、仕事と家庭(子育て)で揺れに揺れていた自分自身を悔いる思いで振り返っていました。でも......。
いつしか私は自分の教員という仕事を振り返っていました。子どもたちが安心して過ごせる学校(園)、子どもたちが「NO」と言わない学校をつくることができれば、私をはじめとした大人たちは安心して働けるのではないかと思い至りました。学校を子どもたちが居場所として選んでくれたとき、学校はとても素敵な場所になるのでしょう。
日々元気をなくし、しぼんでいく子どもたちの声を聞くと、そこには大人の生き様が見え隠れしているように思えます。弱さを否定され、家にも学校にも居場所を見出せない子どもたちがいるという現実があります。子どもの姿を「わがまま」と言わず「どうして?」と子どもの事情に思いを寄せることから始めましょう。
本書は静かに、淡々と子どもたちの姿を見せてくれます。決して誰も責めたりはしません。本書を読んだ多くの人が「自分の姿」が描かれていることに気づくでしょう。そして、なにかしらの力がわいてくるのではないでしょうか。
冒頭の感想を寄せてくれた友人は、とてもすてきな表情をしていました。
猪股知子(秋田県教員)
2009年9月14日
