総研ノート:コラム

国連・障害者権利条約がついに発効

2008年5月3日、エクアドルが批准し批准国が20ヶ国を超えたため国連の障害者権利条約(The Convention on Rights of the Persons with Disabilities)が国際条約として発効した。日本政府は2007年9月に高村外務大臣が署名をしているが批准はまだ行っていない。国連で5年をかけて審議されてきたこの条約が採択されたのは、奇しくも教育基本法改悪された2006年12月の13日であった。
 その第24条で教育はインクルーシヴ教育が原則であることが規定されている。

第24条 教育
1  締約国は障害のある人の教育への権利を認める。この権利を差別なしにかつ機会の平等を基礎として実現するため、締約国は、次の各号の目標をもつ、あらゆる段階におけるインクルーシヴな教育制度と生涯学習とを保障する。
(a) 人間の潜在能力並びに尊厳及び自己価値に対する意識を十分に開発すること、並びに人権、基本的自由及び人間の多様性の尊重を強化すること。
(b) 障害のある人がその人格、才能、創造力並びに精神的及び身体的な能力を最大限度まで発達させること。
(c) 障害のある人が自由な社会に効果的に参加することを可能とすること。
2 この権利を実現するため、締約国は、次の各号を確保する。
(a) 障害のある人が障害を理由として一般教育制度から排除されず、障害のある子ど
 もが障害を理由として無償で義務的な初等教育、又は中等教育から排除されないこと。
(b) 障害のある人が自分の住む地域社会で他の者と平等に、インクル
ーシヴで質の高い無償の初等教育及び中等教育にアクセスすること
ができること。
(c) 個人の必要に応じて合理的配慮が行われること。
(d) 障害のある人がその効果的な教育に必要な支援を一般教育制度内で受けること。
(e) 完全なインクルージョンをめざして、教科学習や社会性の発達を最大にする環境のなかで、効果的で個別的な支援が提供されること。

 1994年にユネスコが採択した「サラマンカ宣言」(日本も賛成)をインクルーシヴ教育をどう訳そうかと苦労しながらついに日本語に置き換えられなかった1996年から12年の歳月を要した。
 だが、日本のなかでとりくまれてきた「共生・共学」とほぼ同じことを意味するインクルーシヴ教育が障害のある子どもの教育の基本だとするこの国際条約が発効したことの意義はとてつもなく大きい。それは障害のある子どもたちの分離・別学を強めつつある「特別支援教育」を見直す必要があるからだ。
 日本政府が特別支援教育制度の見直しをしつつ、本条約を批准することを強く求めたい。

 障害者権利条約の発効、日本の批准を願ってまとめた拙著で詳しい経過と読み方などを知ることが可能である。この本にはイングランドのダウン症の女性とその両親がインクルーシヴ教育に向かって歩んできた物語も翻訳してある。ぜひお読みいただければ幸いである。

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嶺井正也/シャロン・ラストマイヤー著
『インクルーシヴ教育に向かって』(八月書館、1300円+税)

嶺井正也(所長・専修大学教授)

2008年5月12日