総研ノート:世界の各地から

授業中の携帯電話使用が禁止〜イタリア

イタリア公教育省HPに興味深い記事があったと、ミラノ在住の堂満葉子さんが訳してくれました。授業中の携帯電話使用を禁止する2007年3月15日の公文書第30号の要約です。同文書の法的性格については、現時点では不明であるが、とにかくイタリアの学校生活の一端を浮かび上がらせてくれる記事であろう。

ただし、後半部分は生徒全体に規律重視を求める内容となっている。もちろん、注1で紹介しているように、まずは子どもの権利保障という土台があった上でのことである。

  1. 授業中の生徒の携帯電話の使用は禁止される。これは生徒の権利と義務に関する1998年の大統領令第249号(D.P.R.n249/1998)(注1)にもとづくものである。
  2. 上記の禁令に違反した場合は、各学校が罰則にもとづいて懲戒を行う。
  3. 懲戒は学校及び教育機関が各々校則に沿った上で、責任を持って実施する。その場合、効果があがる方法を用い、また、規律、適法性、社会での共存意識などを考慮しながら実施されなければならない。
  4. 現行法を考慮した上で、校則が適切な罰則を定めているかどうか、学校は審査される場合がある。
  5. 文部省は、罰則の例をインターネットに紹介する。
  6. 授業中は、いかなる場合も携帯電話の使用は禁止される。公教育省通達(n.362.del25agosto1998)(注2)により、教員の合も同じく禁止される。
  7. フィオローニ公教育大臣が内閣に提出するようになっている規定改正草案により、懲戒の処置及び上訴の手続きの簡素化と敏速さが求められることになろう。
  8. 重い懲戒が課せられる、個人の安全性が脅かされる、心身の暴力の兆候やひどい「いじめ」現象が見られるなどの特別の場合や程度が非常に重い場合には、提案される改正規定にしたがい、年最終成績判定会議あるいは課程終了の国家試験の対象とならないといういっそう厳格な懲戒が課せられることになる。
  9. 各学校は学年度始めに保護者に対し、自分の子どもについての「連帯責任の社会的協定」を交わすことができることに関する規則が導入されることが予告される必要がある。この協定には学校と保護者とで共有する権利と義務とが示される。
  10. 校長、教員、技術者、事務職員はすべて、学校全域での生徒の行動に注意をし、生徒が校則に違反をしたときは、威厳のある態度で、適切な指導をしなくてはならない。これらの任務は、倫理上かつ職務上の義務である。この義務を怠った場合は、勤務評定の対象となる。

<注1>
イタリア共和国大統領令 1998年6月24日
中等学校生徒の地位を確定する規則(1998年7月29日付官報第175号)
第1条 学校共同体の生活
1.学校は学習、知識の獲得および批判意識を通じて人間形成と教育を行う場である。
2.学校は民主的価値を持ち、あらゆる面で人間成長を目的とする、対話、探求及び社会的経験がなされる共同体である。それぞれの学校において各人は、同じ尊厳さをもって、それぞれの役割を担いつつ、憲法、1989年11月20日にニューヨークで採択された子どもの権利に関する国際条約及びイタリアの法体系の原理を踏まえて、市民的人間形成、学習への権利の具体化、生徒個人の潜在能力の発達及び不利な状況に対する補償のために活動する。
3.学校共同体は、自らが含まれるより広い市民的、社会的共同体と協力しながら、−生徒関係という特性にプロジェクトや教育活動の基礎をおき、若者のアイデンティティ、責任感や個々人の自立に向けた自覚や価値意識を促す教育によって若者の人格発達に貢献し、かつ知識の発展や実際生活への参加という文化的、職業的な目標の達成を追求するものである。
4.学校共同体の生活は、表現、思想、良心および信教の自由に基づくばかりでなく、学校構成員の年齢や条件に関係なく、イデオロギー的、社会的、文化的な面のそれぞれにおいて、障壁のない相互尊敬に基づく。
第2条 権利
1.生徒は、適切な文化的人間形成と職業的人間形成への権利を有している。その人間形成は、進路指導(orientamennto)によって生徒がアイデンティティを尊重しかつ生かすことができるとともに、思想(idee)の多様性へと開かれたものでなければならない。学校は、学習の継続性を追求するとともに、適切な情報提供と、要求の明確な表現、自由に選択したテーマの発展、及び積極的な自立を実現することができる可能性とを通じて、個人の特性を生かすところである。
2.学校共同体はその構成員間の連帯を促すものであり、また秘密保持への生徒の権利を保護するものである。
3.生徒は学校生活を律する決定や規則に関して知る権利を有している。
4.生徒は学校生活に積極的にかつ責任を持って参加する権利を有している。学校管理者および教員は、規則regolamenntoに則り、授業目標計画や授業目標の明確化、学校組織、評価基準、本・教材(の選定)に関わる権限行使に関して、生徒と建設的な対話を行う。さらに生徒は、自分で長所・短所を見定めることができ、自らの可能性を最大限に伸ばすことができるような自己評価の促進を目的とした、明確で適切な評価への権利を有している。
5.学校組織に影響を及ぼすような決定がなされる場合には、高等学校の生徒は、その要求に基づき、協議を通じて意見を表明することができる。同様の場合、中学校においても同じような方法で、生徒と保護者の両者に協議の機会が与えられる。
6.生徒は学習の自由への権利を有し、学校が提供する補充カリキュラムによる活動及び任意の追加活動に関して選択の権利を自立的に行使する。カリキュラムによる教授活動や任意の追加活動は、学習のリズムと生徒の生活に必要なものとに配慮した時間と方法に基づき組織されるものとする。
7.外国人生徒は自らが属している文化的、宗教的な生活を敬う権利を有している。学校は彼らの言語と文化の歓迎と保護、さらには文化間活動を目的とした自発活動initiativeを奨励し、支援する。
8.学校は以下のことを保証する条件を徐々に作り出すよう努力するものとする。
a)人格の完全な成長に適した環境と質の高い教育ー教授サービス
b)生徒及びその集団が自由に行う自発活動を支援する追加的、補充的教育活動の提供offerte formative
c)遅れや不利の補償や、学校離脱の防止と救済のための具体的な自発活動
d)障害のある生徒を含む全ての生徒に適合するよう学校環境を健全にし安全を図ること
e)適切な施設・設備が自由に利用できること
f)健康を保持し促進するサービスと心理的救済のサービス
9.学校は規則で、各クラス、課程及び学校段階で行われる生徒の集会及び会議の権利行使を保障する。
10.学校の規則は、各高校の内部での結社の権利、学校の内部で自主活動を行う生徒個人及び集団の権利行使ばかりでなく、生徒や生徒が属する集団による場所の利用を保障し、律するものとする。
第3条 義務
1.生徒はきちんと授業に出席し、学習課題に熱心に取り組まなければならない。
2.生徒は学校長、教員、学校全部の職員そして同じ生徒に対して、他人が自らに敬意を払よう要求すると同じように、他人に対して敬意を払うようにしなければならない。
3.生徒はその権利行使および義務履行に際して、本規則第1条で規定している原則に則った正しく、一貫性のある行動をとらなければならない。
4.生徒は、各学校の規則で示されている組織及び安全に関わる諸規定を遵守しなければならない。
5.生徒は施設、設備及び教具を正しく使用しなければならないし、学校生活においては学校財産に対する損害を及ぼさないように行動しなければならない。
6.生徒は、学校生活の質に関わる重要な要素として、学校環境を居心地の良いものにし、それを大事にする責任を分担しなければならない。
第4条 懲戒
1.各学校の規則は、(1)本規則第3条に規定する義務、学校共同体内部での関係の適切なあり方及び各学校の固有の条件に関わる懲戒相当の懲戒に該当する行為、(2)関連懲罰、(3)懲罰を加える権限を有する機関、ならびに(4)続けて示される基準にしたがった関連手続き、を明確にしなければならない。
2.懲戒措置は教育的な目的を有し、責任意識の強化と学校共同体内部での適切な関係の修復をめざすものである。
3.懲戒に関する責任は個人的なものである。誰しも正当な理由を先ず表明するような機会が与えられない限り、罰せられることはない。行動に関するどんな懲戒的な違反も、成績評価に影響をあたえるものではない。
4.正しく行使され、他人の人格を傷つけない意見表明の自由は、どんな場合でも、直接的にも間接的にも罰せられることはない。
5.懲罰は必ず一時的なものであり、懲戒相当の違反に見合ったものであり、たとえ可能であるにしても損害賠償の原則に則ったものである。懲罰は生徒の個人的事情を考慮する。
懲罰を学校共同体のためになる行為と代替する可能性があることが、生徒に対して必ず示されるものとする。
6.学校共同体から追放する(退学)という懲罰と措置は、必ず協議機関が決定するものとする。
7.学校共同体からの一時的な追放(停学)は、懲戒に該当する重大かつ数度に及ぶ違反の場合にのみ、15日を超えない期間内で執行するものとする。
8.追放期間中、可能である場合には、学校共同体への復帰を準備するために、当該生徒及びその親との連絡方法が規定されていなければならない。
9.学校共同体からの生徒の追放は、個人の安全に対する違法行為がなされたか、あるいは危険が存在する時にも課すことができるものとする。その場合、追放期間は違法行為の重さあるいは危険状態の持続期間に見合ったものとする。可能あれば(たとえ可能であっても)、第8項規定が適用される。
10.司法機関、社会サービス及び家族ないし当該生徒自身が示した客観的条件が、所属の学校共同体への復帰を認めない場合には、その生徒は、年度途中であってもanche in corso d'anno 他校への転校が認められる。
11.試験期間中に起きた懲戒相当の過ちに対する懲罰は試験委員会commssione di esameが課し、外国の受験者にも適用される。
第5条 異議申立
1.第4条第7項の懲罰及びそれに関する上訴については、1994年2月16日の法律委任命令第297号の第328条の第2、4項の規定が適用される。
2.第1項に基づく様々な懲戒処分snzioni disciplinariに関して、高等学校の生徒及び中学校の保護者は、処罰の通知を受けてから15日以内に、各校の校則に基づいて設置、管理され、高等学校の生徒及び中学校の保護者を代表するものが少なくとも一人は入る校内の妥当な保護機関に訴えることができる。
3.第2項の保護機関は、高等学校生徒のあるいは誰でも関係するものの請求によって、現行の校則の適用に関して校内で生じた争いを処理するものとする。
4.郊外にある学校管理責任者は、現行の校則の内容に関して高等学校生徒あるいは誰でも関係するものが行う苦情申立reclami propsti について最終的な処理を行う。その処理は、高等学校の場合、県会consulta provincialeから指名される2名の生徒、県学校協議会が指名する3人の教員及び1名の保護者で構成され、郊外の学校管理責任者が任命する倫理的にも市民的にも人格の高い人物が議長を努める保護機関による拘束力のある判断に先立って行われるものとする。中学校の場合には、保護機関の構成は生徒の替わって、保護者2名が加わることとする。
第6条 取り扱い
1.学校の校則及び現行規定で定められるサービス証書cartaは、高等学校の生徒及び中学校の保護者とのあらかじめの協議を経て採択されたり、改正されたりするものとする。
2.この規則及び各学校の基本文書は、写しにして入学証明を受けた生徒に対して提供されるものとする。
3.1925年5月4日の勅令第653号第1編第3章は廃止される。
(嶺井正也・仮訳)

<注2>
これについては、次回に紹介する。

2007年3月15日