総研ノート:コラム
愛国心博物館&キャラクター教育?(1)
8月7日に開催された「第24回夜間公開研究会」で「愛国心」教育についての報告を簡単にした。その報告準備のためにアメリカの「愛国心」教育を調べていて驚いた。
ジョージア州が1999年の州法で学校におけるcharacter educationを規定した。キャラクター教育で教えるべき徳目(character traits)は27が示されており、その1つに、patriotismがあるのである。参考までに27の徳目をあげておく。
Courage(勇気)
patriotism(愛国心)
citizenship(市民性)
honesty(正直)
fairness(公正)
respect for others(他者への敬意)
kindness(親切)
cooperation(協力)
self-respect(自尊)
self-control(自律)
courtesy(礼儀)
compassion(思いやり)
tolerance(寛容)
diligence(勤勉)
generosity(寛大)
punctuality(時間厳守)
cleanliness(清潔)
cheerfulness(快活)
school pride(学校の誇り)
respect for the environment(環境への敬意)
respect for the creator(創造主への敬意)
patience(根気)
creativity(創造性)
sportsmanship(スポーツマンシップ)
loyalty(忠誠)
perseverance(忍耐)
virtue(徳)
ジョージア州の学校はこうした徳目を、全国愛国心博物館(The National Museum of Patriotism)との連携のもとで教えるようになっている。この博物館によると、「愛国心とは人が支持し、奉仕し、守るべき国(country)、そしてまた市民によって鼓舞され、良い方向にむけて変革し、市民を保護すべき国に対する愛である」とされている。
今、日本では教育基本法「改正」をめぐる議論のなかで、憲法で規定する「内心の自由」に深く関わる「愛国心」のような徳目を学校教育で教えるよう法律で規定することの是非が問われているが、このジョージア州法の規定はそんな議論はおかまいなしのようである。
そもそも徳目を並べてこれを学校で教えようというキャラクター教育とはいったいどういう経緯で登場してきたのかは、後で触れるにして、その前に、なぜ愛国心教育なのか。
同博物館はそのHPで次のようにその理由を明らかにしている。
2001年9月11日以前、多くのアメリカ人が自分たちの国について何の心配もしていませんでした。ですから愛国心も古くさく、時代おくれのものだと考えていた。アメリカ人には合衆国に対する忠実さ(allegiance )や敬意に欠けていた。ジャスティン・トレス(Justin Torres)は「愛国心はすべてのアメリカ人にとって生まれつき備わっているものとは考えられない。他の感情(emotion)と同じように、愛国の感情( patriotic feeling)は呼び起こされなければならない。」と指摘しています。博物館の目標は簡潔なものである。それは、国に対する深い愛、アメリカ人と呼ばれることへのプライド、もっと忠実に行動する決意(more steadfast resolve to act)を生みだす経験を提供することにあります。この博物館は来館者に対し、自分よりも他者に対する義務を優先させること(a placing their duty to others above self )、私的利益でなく公共善を考えること、という行動ができるようにするために創設されました。このようにこの博物館はそれぞれが自分で行動することができるようになる、すべての来館者の内部にある未開発の愛国心の源泉(an untapped patriotic wellspring)を掘り当てるようにしています。
博物館はまた、歴史博物館でもあり、自由を樹立し、アメリカ的生活様式(the American way of life)を可能することに大いに貢献した事件や人物を中心にしています。そこでは、信じがたい経験をしてきた英雄、そしてまた、彼らが愛した国民(the nation)のために「最後の力」振り絞った英雄に光をあてています。アメリカに最初に移住してきた人の物語を端的に物語っているのは、自由の法(the Statue of Liberty)か、それとも名誉勲章(the Congressional Medal of Honor,)を受けた人の勇気を描写する演出のどちらかは別として、博物館は愛国心の歴史が分かるように演出をしています。
来館者は博物館でユニークな経験を期待できます。それは、ほこりまみれの屋根裏にあった遺物を集めた場所ではないからです。わが博物館は生き生きとしており、活動的な場所なのです。訪問するだけで、教育され 楽しむことができます。最後には、来館者は別人となって退館していきます。
アメリカの建国精神を体験させることによって、アメリカ的価値を学ばせ、結果としてアメリカという国への忠誠心を育む意図が明確に示されている。日本でいえば、靖国神社にある遊就館を想起させるような博物館であろう。
キャラクター教育
さて本論に戻ろう。キャラクター教育を規定した法律は1999年、同博物館がキャラクター教育の正式のリソースセンターに指定されたのが2000年であるから、つまりあの2001年9月11日以前に制定されている。したがって、ジョージア州の愛国心教育はその前から始まっているはずである。
ではいつから、どういう経緯で愛国心を含むキャラクター教育が入るようになったのか。
「THE CENTER FOR THE 4TH AND 5TH RS」という団体によると、キャラクター教育は教育そのものの歴史と古いといっている。しかし、大きな教育運動として展開されるようになったのは、どうやら新保守主義が台頭してきてからのようである。
同団体が「1960年代から70年代に、『過程』あるいは思考力を強調する価値教育(values education)〜自分の価値を明確化(価値の明確化)すること、価値について論じる(道徳的葛藤についての議論)こと、意思決定過程を中核としている〜は、伝統的な道徳内容(正しさと悪との違いの学習や正しく行動すること)を強調するキャラクター教育にとって替わられた。」と説明をしていることからすると、キャラクター教育は新しい形での道徳教育ということになるようだ。
となると、このコラム欄1回だけではとてもフォローできそうにないので、次回の課題にしておこう。
このキャラクター教育は南部のジョージア州だけでなく、北部のノース・ダコダ州でも州法で、道徳教育そのものものとして、規定されている。その15- 38-10は、「教員はそれぞれ、正直(truthfulness)、節制(temperance)、潔癖(purity)、公の精神(public spirit)、愛国心(patriotism)、国際平和(international peace)、勤勉さへの敬意(respect for honest labor)、親への従順(obedience to parents)、お年寄りの尊敬(deference to old age)の大切さを生徒の心に植え付ける道徳教育(moral instruction)を行なわなければならない。」としている。
ここにも、しっかり愛国心が入っている。
日本の教育基本法「改正」の方向性は、まさに、新保守主義がねらう新たな道徳教育であるキャラクター教育と軌を一にしていると言わざるをえない。(続く)
教育総研代表 嶺井正也
2006年8月30日
