総研ノート:世界の各地から
白潤卿「韓国教育事情」シリーズ 韓国の私立学校法改正問題
〈いままでの経緯〉
最近韓国の教育界でもっとも関心を呼んでいるのが「私立学校改正法」である。2004年から与党を中心に浮かび上がったこの法律は、野党ハンナラ党の強い反対にも関わらず2005年の12月9日に国会本会議を通過し、今年2006年7月から施行されることが決まった。当初から予想されたように野党のハンナラ党はこの法律に強く反対し、大規模の国民デモを繰り広げたのであった。また私立学校法人協議会(私学法人)も大反対してハンナラ党のデモに参加しながら、2月10日から行う予定の2006年度の私立学校新入生募集を拒否し、学校閉鎖または慮大統領政権退陣運動までを行うという極端な構えを見せていた。
それに対し政府は私立学校に対する全面的な監査を一斉に行う姿勢を強く示した。また、父母たちの反発も強くて、私立学校側の構えは生徒たちの学習権や教育権を侵害するものであると非難を続けた。最終的には私学法人側はぎりぎりのところでその構えを取りやめることになった。
その後、この法律の再改正に向けて与党と野党とが合意に至ったので、現在、論議中である。しかし、野党は私学法人と一緒になってまだまだ反対の姿勢を見せている。
〈争点〉
私立学校法改正の一番の争点は「開放型理事制」の導入である。「開放型理事制」というのは私立学校法人の理事の一定割合を、教師や父母が参加する学校運営委員会(小学校、中学校、高校に設置)からの推薦で選任しようとする制度である。つまり、私立学校法人理事会の理事定数(7名以上)の4分1を学校運営委員会が推薦する理事にしようとするものである(教員や父母が理事会に入るようになるというので野党と私立学校側は反対である)。当初案では、2006年7月からの施行で、理事を一挙に変えるのではなく、欠員が出た時点で順次入れ替えていこうという予定になっていた。
一方、推薦母体となる教師会や父母会の法制化は保留された。それは私立学校を多く設置する宗教界の反発が予想されたからである。開放型理事制を導入するにしても、建学の精神にかなった理事を入れるということで、開放型理事については学校運営委員会からの推薦を定数の2倍とし、その中から理事会が選択できるようにして、私立学校財団法人の人事権を部分的に保障するような内容になっている。
ただし、私立学校改正法では、私立学校財団法人の親族理事の比率を現行の3分の1から4分の1以内に減らし、「親族の影響」を減らすようにもなっている。また大学では評議員会の設置義務も課せられている。さらに、理事会は会議録を必ず作成し、公開することで透明性を高めるようにしている。
前述したように、この改正案に対し野党ハンンラ党や私学法人側では、私立学校運営の自律性、憲法上の平等原則、職業選択の自由などを制限する恐れがあるとして反対している。また「全国教職員組合(全教組)」による私立学校掌握の危険性があることを反対理由として強調している。
〈現在の状況〉
野党のハンナラ党も改正案を提示していた。その当初案は、大学だけに開放型理事制をいれ、その推薦方法や手順は大学に任せるというものであった。しかし、2 月20日段階の最終案になると、すべての私立学校に開放型理事制を入れるが、その方法や手順は私立学校に任せるという内容であった。
これについては野党内の反発はもちろんのこと、私立学校側や韓国教員団体総連合会(韓国教総)の強い反発も予想されている。与党は当然のことながらハンナラ党の最終案には反対している。私立学校にとって都合のいい理事が選ばれる可能性があるからである。
私立学校の不正をなくすには私立学校法改正が必要だと80%の国民が賛成している。野党もこの世論を無視することはできない。
これから国会の教育委員会で再び論争が展開されそうである。当分の間、韓国の教育界や政治界ではいろいろの意見が交わされることになろう。
2006年2月28日
